㈱元気アップつちゆ

土湯温泉16号源泉バイナリー発電所(福島県福島市)
土湯温泉東鴉川水力発電所(福島県福島市)

温泉街ならではの「価値」を再認識

 福島市西南の山あいにある土湯温泉町は豊富な温泉量を誇る人気の温泉郷で、ピーク時には年間60万人を超える観光客を迎え入れていました。しかし、原発事故の風評被害により観光客が激減。16軒あった宿泊施設も半数近くが廃業と長期休業に追い込まれました。そこで立ち上がったのが、「元気アップつちゆ」でした。
 「震災後、私たちが求めるべき本当のエネルギーは何であるべきだったのか、考え抜きました。2011年10月には仲間たち29人と協議会を発足させ、町の復興計画を策定。土湯が持つ河の流れ、温泉による地熱を活用した、新しい地域づくりを決意したんです」と語るのは、㈱元気アップつちゆの加藤さん。

 ㈱元気アップつちゆでは「バイナリー発電」という中低温(50~200℃)の地熱に適した地熱発電方式を採用。17ヵ所ほどある源泉の中で、最大の湯量を湧出させる16号源泉を利用し、発電出力は440kW(一般世帯約500世帯分)となっています。
 温泉街を流れる渓谷をたどって登っていくと突然現れる発電所は地下に広がるエネルギーの力強さを感じます。
 140℃程度の温水と蒸気を利用して、温泉熱で沸点の低い媒体を蒸発気化。その蒸気で発電するので、温泉効能の変化や減少枯渇の心配もないといいます。

発電所の冷却水を活用した“オニテナガエビ完全養殖”にも取り組んでいます。

砂防堰堤の落差を利用した小水力発電

 土湯温泉を流れる東鴉川の砂防堰堤(※1)を利用した小水力発電は、その落差から生まれる水の勢いを利用して水車を回す発電方式です。

土湯温泉を流れる東鴉川の砂防堰堤

 地熱バイナリー発電事業と合わせて「復興の柱」として再生可能エネルギーによる新たなまちづくり事業を展開しています。

※1)砂防堰堤とは
 土石流など上流から流れ出る有害な土砂を受け止め、貯まった土砂を少しずつ流すことにより下流に流れる土砂の量を調節する施設で、 土砂が砂防堰堤にたまることで川の勾配が緩やかになり、川底や河岸が削られていくのを防ぐとともに、土石流の破壊力を弱めることができます。
参考:国土交通省HPより