二本松中里293-2発電所(福島県二本松市)
自然とは共生し、闘うもの
「どんな農業を突き詰めるか、いまだに父とはよく喧嘩しますよ。でも「発電に挑戦するぞ」って言ったときには一言も反対されなかったですね」と語るのは、大内さん。父は全国的に著名な有機農家の先駆け。その父が50年前に始めた礎を大内さんが継いだのは、震災後のことでした。
食べ物と電気ってつながってるんです。太陽や水や野菜の残さなど、自然は恵みももたらせば、エネルギーも作ってくれる。有機を突き詰めてる私たちが電気も作れないわけがないってね。
「自然と共生し、ときに闘わなくてはならない」、農家の宿命をひしひし感じます。私たちの研究会には14名の仲間がいますが、当初発電に挑戦しようと相談したときも、意見はなかなかまとまらず苦労したんです。
自然の厳しさは誰よりもわかっている仲間たち。福島の復興再生のためとはいえ、未知の発電事業に挑戦するには、一人ひとりに大きな葛藤を招きました。
生きるためには、再エネは必要!
これからの時代、私たちが生きるためには再生可能エネルギーは必須なんです。子どもたちがおとなになるころに、エネルギーを巡って取り返しのつかない事態になってほしくない。それを左右するのは今のおとなたちの責任ですから。
将来は、農業で生まれる残さを活用したバイオマス発電にも挑戦するのが夢だと言います。「残さを発酵、ガス化させることで発電し、そこから生まれる液肥は再び畑に戻す。この地域で自然の資源を循環させたい」と、“その先”を常に見据えています。自然と共生する有機農家の挑戦は、まだ始まったばかりです。