東北おひさま発電㈱

野川3号幹線小水力発電所(山形県長井市)
ながめやまバイオガス発電所(山形県西置賜郡飯豊町)

「発電量以上の価値」がある

  「地域主導のエネルギーが必要。再生可能エネルギーは地域の自立につながる」と語るのは、東北おひさま発電(株)の後藤さん。原発事故当時、ほぼ県全域が停電し、町民は見えない放射能におびえていました。「エネルギーの決定権を持つ政府や電力会社に対して、なすすべがない。地域主導のエネルギーが必要だ」とこのとき強く思い、東北おひさま発電㈱を立ち上げました。 

 夏にはホタルも現われる置賜野川の小水力発電所はパルシステムでんきの発電産地「野川土地改良区」の小水力発電所と並び、山形の置賜地区の小水力発電の一翼を担う先進モデルとなりました。
 発電の規模は小さいですが、それでいいんです。小規模発電所が地域ごとにできて、エネルギーを融通し合える社会になれば電気の自給自足ができます。エネルギーの『自立』は、地域の『自立』にもつながる。だから、この発電所には発電量以上の価値が多くあるんです。

毎日15トンも発生する牛ふん

 「環境問題ですよ。それだけのふん尿が処理もされずに山積みにされるのですから、近隣への悪臭は相当なものです」と、後藤さんはここ飯豊町でもブランド牛「米沢牛」を増やせば増やすほど臭気問題による軋轢が地域内に起きていたことを問題視し、「牛ふんを活用したバイオマス発電」の実現を模索していました。

「非常識」から生まれた電気

 「最初はね、ぜんぜん信用なんてしとらんかったですよ。だって〝牛のふんを集めるために牛たちを横一列に並べる”なんて言うんだから。ど素人が何を言ってんだ、ってね」と語るのは、田中畜産の田中さん。“米沢牛と言えば田中”と言われるほど、内外にその名を知られています。(写真は左が後藤さん、右が田中さん)

 田中さんは先代から畜産業を受け継ぎ、現在約1300頭が肥育されている牛たちは、それまで当然のように“マス”(牛を3~4頭ずつでまとめた仕切り)に暮らしてきました。
 「何百ものマスの中に数頭ずつ牛たちは暮らす。ふんもそこでする。だってそれが伝統で定番なんだから。でも後藤さんがひょっこり現れて“これじゃダメだ”って言うんだよ。それでね、後藤さんは“ふんを電気にすれば一石二鳥だ”って言うわけ。まったく意味が解らない。ふんは堆肥にするもんだ。なんで電気なんだ、ってね」と、田中さんは笑いながら当時を振り返りました。