今、改めて知りたい原発
対談記事
組合員代表と原子力問題の専門家が語る
エネルギー政策の現状と課題
2006年にコープやまなし(現・パルシステム山梨 長野)に組合員として加入。パルシステム山梨理事、常任理事をへて、2023年より理事長。2023年、パルシステム連合会環境委員会委員長に就任。
金融機関勤務をへて、2012年に認定特定非営利活動法人 原子力資料情報室(CNIC)スタッフとなり、現在は事務局長兼研究員。専門分野は原子力政策、原子力の経済性、核政策。2022年より経済産業省「原子力小委員会」委員を務める。
国民不在のまま決められる国のエネルギー政策
パルシステム連合会環境委員会は、パルシステムの「環境・エネルギー政策」(2023年策定)に基づき、「減らす(省エネ)、止める(脱原発)、切り替える(再エネ普及)」ための活動に取り組んでいます。しかし、再生可能エネルギー(以下、再エネ)に対する国の姿勢は消極的です。
おっしゃる通りです。経済産業省「第6次エネルギー基本計画」(2021年策定)にあった「原子力依存度を可能な限り低減する」の文言が、第7次エネルギー基本計画※1(2025年策定)では削除され、「(原発を)必要な規模を持続的に活用していく」に変更されています。国のエネルギー基本計画は、原発を推進する人たちが中心となって策定しているのが現実です。
国民のあいだできちんと議論されていないのに、勝手にエネルギー政策を決められていることに怒りを覚えますね。東日本大震災から14年経っても、福島県には今も帰宅困難区域があり、原発事故に伴う健康不安も、払拭されていません。
福島第一原発の廃炉についても、目途が立っていません。東京電力は、2051年までに廃炉する方針を示してはいますが、燃料デブリ(事故で溶けた核燃料や構造物が冷えて固まったもの)の処分先も決まっておらず、廃炉の見通しは立っていません。廃炉に伴う費用は現在は8兆円とされていますが、廃棄物の処分費用などを含むと20兆円を超えます。ですが、その財源についても何も議論されていない状況です。
そんな状況では、廃炉が進んでいるとはいえませんね。
原発が私たちの暮らしと世界の平和を脅かす?
エネルギー基本計画を見てもわかる通り、国は「再エネと原発はともに必要である」との姿勢を崩していません。この通りに両立しなければ、いけないのでしょうか?
それは誤りだと考えています。環境省が実施した再エネのポテンシャル(導入可能性)調査では、日本の電力需要が今後増えると仮定しても、再エネだけで電力需要をまかなえるとの試算が出ているんです。問題は、再エネと原発を両立しようとした国は、統計的にみても原発が増えていることです。原発を増やすと再エネが広がらないことは、世界の歴史が証明しています。
原発と再エネの両立は、難しいわけですね。
国際エネルギー機関(ⅠEA)の2050年予測によると、温室効果ガスをゼロにした場合の電源構成は、再エネ90%、原子力8%、脱炭素火力2%です。ところが日本の電源構成予測では、2040年に再エネ40~50%、原子力20%、火力30~40%となっています。世界的に見ると、日本は原子力と火力が多すぎます。
使用済核燃料の処分問題もありますし、日本でこれ以上、原発を新設するのは無理だと思えるのですが…。
原発を1基新設するには欧米では数兆円規模のコストがかかり、完成まで15~20年もの時間がかかります。電源の20%を原子力に頼ることも現実的ではなく、日本の原発計画は「ファンタジー」とさえ言えます。
現在停止中の原発をすべて稼働しても、20%の電源をまかなうには足りません。足りなくなった電力を、火力で補うのも無理です。CO2を排出しない脱炭素火力の発電所を建設するにしても、巨額な投資が必要です。コスト面のメリットがあるとは言えないでしょう。
そうした事実は私たち消費者には、ほとんど知らされていませんね。
「日米原子力協定」のもと、日本はプルトニウムを分離する再処理工場と、濃縮ウランを製造するウラン濃縮工場を持っています。これらは核兵器に転用できる技術です。核兵器を持つのは難しいけれど、「日本と同じ施設を持ちたい」と主張する国もあります。日本が原発を推進することは、世界の核兵器廃絶の流れを止めることにもなりかねないんです。
エネルギーの問題が、私たちの平和と暮らしにつながっていることを認識させられます。
原発の是非は、もっと国民的な議論にしなければいけません。その意味で、青森県六ヶ所村に竣工予定の再処理工場について、パルシステムさんが稼働反対の声※2を上げていらっしゃることは、とても心強いです。
行きつ戻りつしながら、社会を変えていく
「原発を再稼働したら、電気代が安くなる」という噂を耳にすることもあります。消費者として気持ちはわかりますが、実際に安くなるのでしょうか?
電気料金の明細書にある再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)を見て、「再エネで電気代が上がった」と思われる方はいらっしゃると思います。でもじつは、原発のための費用も電気料金に含まれているんです。停止中の原発を維持するために、年間約1兆円のコストがかかっています。その財源は、私たちの電気代から捻出されていますが、電気料金の明細書ではわからないようになっているんですよ。
「電力需要がひっ迫するなか、原発のほうが安定電源」という意見はありませんか?
むしろ逆で、再エネのような分散型電源のほうが安定していると言えます。2018年の北海道胆振東部地震では、苫東厚真火力発電所や送電線が被害を受け、北海道全域停電が起きました。この時、泊原発も外部電源を喪失しています。原発や火力発電所のような大規模集中型の発電所には、こうしたリスクが潜んでいます。
どうすれば、一人ひとりの気持ちを再エネや省エネへと動かし、意識を変えていけるのか。エネルギー問題に関心を持ってもらうための伝え方の難しさを、痛感しています。
再エネへの切り替えを進めるには、国民の一人ひとりがエネルギー問題に関心を持ち、なおかつ、正しい情報を得ることも必要です。
正しい情報を得て、誤らない選択をする。情報もそのままではなく、常にアップデートしていく。そのためにも、エネルギー問題を自分ごととしていくことが大事ですね。世界の未来を考えたとき、私たちはどういう選択をするのか。
エネルギー問題は、一人ひとりの生活に重く関わってきます。地球規模の気候変動を考えると、これ以上、火力に依存することもできません。家庭用蓄電池や住宅の断熱改修など、省エネに関しても、まだまだ個人単位でトライできることがあると思いますよ。
ちょっとずつ小さくても、地域から社会を変えていく。全国に広がっている「産直産地」にも、再エネを広げる可能性があります。
生産者の方がパルシステムさんといっしょに、ソーラーシェアリングを進めるのは、面白い取り組みです。エネルギー政策は、すぐに大きく変わることが難しい。行きつ戻りつしながら、少しずつ社会を変えていく。それを前提として、どう再エネを広げていくのか、考えていく必要があるのではないでしょうか。
日本の消費者運動は、安全・安心の食文化を暮らしに取り入れた歴史でもあります。エネルギー問題も、同じだと思います。日本は食糧自給率も、エネルギー自給率も低い国ですが、食生活と電気を選択し、切り替えることができる。私はそこに、再エネに対する希望を感じています。
おふたりの話からは、原発が安全と言い切れないこと、再生可能エネルギーへの切り替えが重要であることを再認識しました。
パルシステムでは『エネルギー未来アクション』として特設サイトを立ち上げ、3つのアクション「限りあるエネルギーを大事にする」「エネルギーのしくみについて考えてみる」「未来のためにエネルギーを選んでみる」を提唱しています。みなさまもご参加ください。
発電産地の取り組み
発電産地のひとつ「飯舘電力」がある福島県飯舘村では、事故から14年が経った2025年4月現在でも村の一部が帰宅困難区域のままとなっています。
パルシステムでんきの取り組み
パルシステムでんきがお届けする電気は、太陽光発電、風力発電をはじめ、水力、地熱、バイオマスと複数の種類の再生可能エネルギーを活用しています。
ソーラーシェアリングの実践
ソーラーシェアリングをする発電産地のひとつ「森のソーラー」。太陽光パネルの下で原木しいたけを育てています。