国際協同組合年のいま、改めて問う!
なぜ、生協は"でんき"を届けるの?
座談会参加者のみなさん
左からパルシステム電力 小林裕太、嶋崎宏之、奥田健太郎、
日本生活協同組合連合会 金子直之さん、新良貴泰夫さん、地球クラブ浅香聡さん
東日本大震災に起因して発生した福島第一原子力発電所事故。これをきっかけに電力供給の安定性や透明性への関心が高まり、電力小売自由化の必要性が再認識されました。そして全国の生活協同組合でも「再生可能エネルギーを中心とした電力事業」が活発になりました。今年は「国際協同組合年」。改めて、「なぜ生協が電力を組合員に届けるのか?」を、日本生活協同組合連合会※1(以下、日本生協連)、その子会社で小売電気事業者である地球クラブ※2のみなさんに、パルシステム電力(以下、パル電)がうかがいました。
協同組合が「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献し、より良い社会を築くための役割と可能性を世界に広めることを目的に、国連が2025年を協同組合の活動を促進する年と定めました。
生協のでんきは作り手の顔が見えるエネルギー!
大震災を経て、日本生協連は再生可能エネルギーを「創って、使って、広げていく」ことが必要だと考えました。特に「使って、広げる」を実践するために地球クラブを立ち上げたんです。そして、いまは「生協の2030環境・サステナビリティ政策」に基づき、再生可能エネルギーの量を増やすことに集中してますが、今後はその「質」や「中身」が問われると考えています。
これまで私たちは、エネルギーの消費を「減らす」、原発を「止める」、再エネに「切り替える」をスローガンに、食を支えてきた「産直産地」とともに再生可能エネルギーの普及を進めてきました。ソーラーシェアリングや農業用水路を活用した小水力発電、鶏ふんのバイオマス発電などに挑戦し、私たちは買電を通じて応援してきました。おっしゃるように、電力を調達する私たちこそ「質」や「中身」を見極めていかなくてはなりませんね。
多くの企業がエネルギー事業に投資・拡大するなか、一部では野放図的な乱開発がさまざまな問題を引き起こしているとして取りざたされています。ですから、本質的な意味で「広げる」ために生協としてどのような形で発信していくべきか考えていかなくてはなりません。
私たちが協同組合として、地域や組合員とつながって電気を作っていくには3つのポイントがあると考えています。その意味では「パルシステムでんき」のような「作り手の顔」が見えるエネルギーはまさに「生協の電気」です。社会の隅々までしっかり広げていくには「自分たちが使うエネルギーを自らも作っていく」姿勢が大切。エネルギーは、食と同じく暮らしに欠かせない大事なものですからね。
生協のでんきは地産地消!地域循環!組合員参加!
現在、生協の電力小売事業者は19社あります。例えば、生活クラブの庄内・遊佐太陽光発電所は、市民ファンドで地域住民が出資し運営に参加したり、新たな発電所建設資金の調達もクラウドファンディングで募っています。コープ東北の羽川風力発電所も、東北3生協を中心とした出資に加え、震災を経験した組合員の思いを受けて「組合債」が含まれています。地産地消、地域循環、組合員参加と、それぞれ生協らしさが表れています。
パルシステムは、組合員へ問題提起し、巻き込むのが上手ですね。夏休みの自由研究をテーマに工作やイラストの作品募集を行ってみたり、地域イベントでアンケートを集めたり。ただの営利目的の事業ではなく、社会をよくするための「運動」と考えているのがわかります。そんな信念で電力事業に取り組む生協は、そう多くはないと思います。
電力小売の全面自由化からまだ10年足らず、法制度は目まぐるしく変化し複雑になってきています。さらに、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに電力市場価格が高騰したとき、多くの企業が経営難に陥ったり、事業撤退の動きがありました。こうした厳しい状況のなかで「それでも生協が電力事業を続けるのか」と、正直なところ何度も自問していました。"続ける"決断ができたのは、組合員の支えがあったから。食の分野では持続可能な仕組みづくりを生協運動で組合員と築いてきました。電力事業もまた、この運動の延長線上にあるのだと――あの時強く実感しました。
生協のでんきは社会をよりよくする運動!
運動として続けるためにも、生協同士がつながって今後のビジョンや悩みを共有する機会として「再エネ開発交流会(3ページコラム参照)」をスタートしました。まさに、「広げる」ための取り組みですね。
実際、産直産地の生産者から「発電事業をやりたい」と言われても、私たちはそれを事業化するための経験がまだ浅いので、ぜひ全国の生協が積み上げてきたノウハウを共有させてもらいたいです。
電力事業で悩む生協は多いです。発電設備を設置する場所の確保が難しいとか、太陽光発電以外の発電方法をどうやって実践すればよいかわからないという声はよく耳にします。
全国の生協の仲間たちが集い、課題も含めて分かち合えるのが生協ならではの強みだと思います。"競合"よりも協同の関係で連携すれば、新しいことにもチャレンジできると思います。そう考えるとワクワクしませんか?
わくわくします。それがきっと、"生協人"ってことですね!
※1 日本生活協同組合連合会…日本各地で別法人として活動しているさまざまな生協が加入する全国連合会。コープ商品の開発や、各地の生協の活動をサポートなどを行っています。
※2 地球クラブ…日本生協連が設立した電気事業者。生協の店舗・宅配センターなどの施設や、提携する生協と契約する組合員に、再生可能エネルギーを、供給しています。
生協のでんきづくり3つのポイント
地域資源である!
パートナーシップ
サステナビリティ
目的としない!
市民ファンド主導の発電所建設
地域に住む人々の力で再生可能エネルギーの発電所を作る動きは各地で広がりを見せています。しずおか未来エネルギーも、市民ファンド主導で建設されました。
ソーラーシェアリングと組合員交流
原木しいたけの「ほだ場」の上でソーラーシェアリングを行う森のソーラーでは、
積極的に組合員との交流を行っています。
市民出資による風力発電
波崎未来エネルギーの風車も茨城県神栖市の地元商工会が呼びかけ、市民が出資して建設。東日本大震災の際には電力不足の解消に役立ちました。