きぼうのでんき2026年1月号

「地域の資源」を地域のために!

パルシステムでんきの「発電所」が
地域で取り組む4つのこと
角田伸一さん
角田伸一さん
マネジャー

発電産地 農業とエネルギーの共生を目指し、市民出資を取り入れた「大潟村ソーラーファンド」を通じて地域循環型の事業を推進。村、村内企業・団体、パルシステムを含む首都圏の生協などが共同出資して設立された第三セクター型の株式会社。

子どもたちが手作りしたクリスマスソーラーランタン

クリスマスソーラーランタン

地域の歴史を伝える色とりどりの「家」の形をしたランタン。

――かわいいランタンですね。子どもたちが手作りしたものと聞きました。
クリスマスソーラーランタンと言います。クリスマスに飾るちょっとしたランプの工作教室を、地域の公民館が開催している「きらきら塾」のプログラムに加えていただき、地元の子どもたちを招いて開催したんです。毎年クリスマス前の時期に開催をはじめて、もう5年以上になります。
ここ大潟村は日本最大の干拓地。戦後の食糧需要を満たすため、日本で2番目に大きな湖だった「八郎潟」を干拓して農地にした歴史のあるところです。1957年に着工、1964年に大潟村となり、全国から多くの農家が入植してきました※1。
――このクリスマスランタンがどれも「家」の形をしているのはなぜですか?
村に入植がはじまってから第1次、第2次、と入植が段階的になされるたびに、代ごとに住まう家の屋根の色を変えていたそうです。黄、赤、青…集落ごとに色とりどりの屋根が広がっていく様は、それはもう目に眩しい輝きがあって、日に日に村が発展していく象徴でした。
それで、そんな記憶を子どもたちに伝えられたらな、という思いもあって色とりどりの「家」の工作にしたんです。もっとも子どもたちはそんな歴史は後回し、工作に熱中してますけどね。連れ立ってきたおばあさんの方が「まあ、懐かしい! うちはねえ、青だったのよ!」なんて盛り上がっていただくことも。
公民館で太陽光発電の工作教室!
きらきら塾

公民館事業に参加して地域の子どもたちと交流を続けています。

テーマは「地域への恩返し」

地域との絆を大切にする角田さん

角田さんと地域の様子

地域の人々との交流を通じて、発電所の意義を伝える角田さん。

――地域密着であろうとする発電所の存在を知ってもらうため、村の歴史や暮らしの視点を盛り込みながら、子どもからお年寄りにまで巻き込もうとされているのですね! また、地域の障がい者福祉と連携した"養鶏"も8年目を迎えたそうですね。
地元名産の「比内地鶏」の飼育を、太陽光パネル下に広がる敷地をお貸しして、活用してもらっています。
B型就労支援施設である「大潟つくし苑」の利用者の方々が、スタッフのみなさんと一緒に毎日いらしてますよ。鶏たちに水をやり、エサを与え、それはそれは一生懸命に。
障がいのある方々はなかなか地域と接点が生まれにくい。でも生き物の世話をしながら、その商品化にも関わり、この春には町に出てキッチンカーの売り子になる計画も。私たち発電所はあくまで場所をお貸しする黒子に徹しながら、間接的に地域のさまざまな環境におかれた人たちがつながるきっかけづくりができたらいいな、と思ってサポートを続けています。
潟共エネ通信
地域で広報誌を発行!
潟共エネ通信
シルバー人材の協力を得ながら約800戸に配付しています。
大潟つくし苑
太陽光パネルの下で比内地鶏の飼育!
大潟つくし苑
地域の障がい者施設の利用者が地域と交流できる拠点に!
カタマルシェ
地域団体と一緒にブース出展!
カタマルシェ
年2回、村内の公園で催される地域イベントに出店!
――再生可能エネルギーの発電所でありながら、そこまで地域とのかかわりを作ろうとされるのはなぜですか?
私たちの太陽光発電所は、市民のみなさんの出資で成り立っている市民発電所なんです。出資くださった市民に、株式会社として配当を戻す企業責任、という意味も当然ありますが――それだけじゃないんです。
――といいますと?
みなさんが毎月払っている電気代には「再生可能エネルギー発電促進賦課金※2」というお金も含まれていますよね。それは会社員でも農家さんでも学生さんでも同じ。電気を使えば、その暮らしに関係なくお金はかかる。当たり前の話です。
でも、それは障がいのある方や、シングルマザーの方でも同じ。事情があって暮らしが楽ではない方にも等しく賦課金はかかっている――いや「かけさせてしまっている」ということを忘れてはいけない、と思っています。
だから単なる発電所ではなく、地域のための発電所、地域とともにある発電所にならなければ、という義務感にも近いものがあるんです。
――再エネの推進を巡っては賛同される方ばかりではなく、疑問を感じている方もいらっしゃると思いますが…大潟村で再エネの発電事業を進めてきたなかで、疑問を投げかけられたことはなかったのでしょうか?
まったくないです。それは実は――大潟村の誕生とその後の"あり方"が大きく関係していると思っています。
ご存じの通り、大潟村はもともと湖だったところを国策として大規模な干拓事業を行い、半ば強引に農地にした土地です。誕生した時点で、すでに自然には大きな負荷をかけているのです。
また、大潟村の農地を潤す用水はすべて八郎湖からポンプで汲み上げ、田畑を満たしています。余剰分は人工の川を通じて集められ、大規模排水機場を介して再び八郎湖に戻ります。つまり電気がないと農業は成り立たない土地なんです。
だからこそここでは「環境に迷惑をかけているのだから、よりよい環境を取り戻せることは何でもしよう」というアイデンティティが代々受け継がれています。有機農業しかり、石けん運動しかり。それは誰ともなく、率先して取り組んできたこの村の人たちの生き方そのもの。
そのため再生可能エネルギーの発電所を作ろう、となったときも、誰もなにも反対しませんでした。そんな村に受け入れられながら私たちは電気を作っています。恩返ししなきゃ、って思うのも、なんかわかるでしょ?(笑)

大潟村の用水路システム

大潟村の用水路

灌漑により造成された大潟村には網の目のように用水路が張り巡らされている。

――なるほど…その恩返しが、また次のご恩を生み出しているのかもしれないですね。
そうですね。なかなかこんな発電所ないんじゃないかなあ。ぜひ首都圏の組合員のみなさんにも遊びに来てもらいたいですね。私がたっぷり恩返しさせていただきますんで!
※1 大潟村がある場所は、元は八郎潟という浅い湖でした。食料増産を目的に国の事業としてここを干拓して農地にする計画が進められ、生まれたのが大潟村です。昭和40年代、この土地に移り住み(=入植)、農業に従事する入植希望者を全国から募集しました。
※2 FIT電気(再生可能エネルギー)で発電した電気は、電力会社が一定価格、一定期間買い取ることを国が約束しています。この制度が「固定価格買取制度(FIT制度)」で、その費用に充てられているのが「再生可能エネルギー発電促進賦課金」。すべての電力会社で同一料金が設定されており、電気を利用するすべての方が支払うしくみです。