パルシステム電力通信NO.11 野呂川発電所(水力発電所)

野呂川発電所を訪問しました!

車両規制のある細い道を抜け、たどり着いたのは山深くにひっそりと佇む巨大な発電所。 人のいない静かな環境の中で、絶え間なくエネルギーを生み出し続けています。 南アルプスの清流・早川の力を活かす水力発電――その中心を担う野呂川発電所で、自然のエネルギーが電力へと変わる迫力ある現場におじゃましました。

-山梨県の電気事業について-
昭和32年(1957年)、西山ダムと西山発電所の運転開始から始まりました。現在では一つの水系において上流から下流まで複数の発電所を配置し、野呂川発電所で使用した水を奈良田第一・第二発電所で再利用、さらに西山ダムを経て西山発電所で活用し、シリーズで発電するシステムが確立されています。この一連の流れにより、水資源を無駄なく活用する効率的な発電体制を実現しています。

⛰️広河原山荘、広河原橋

険しい山道を抜けた先にあるのは、広河原山荘です。2022年にリニューアルオープンしたとのことで、とてもきれいな建物でした。山荘のすぐ隣には、野呂川広河原インフォメーションセンターがあり、屋内には南アルプスの山々や、そこで生きる動植物などについてパネルが展示されていました。

その後、インフォメーションセンターからすぐの広河原橋へ案内していただき、野呂川を間近で見ることができました。
早川の上流につき、水が透き通っており非常にきれいでした。

💧小樺(こかんば)取水口

広河原山荘から少し下り、小樺取水口を見学しました。標高1,450mの高所に位置する野呂川発電所の取水口で、提高が18mあることからダムにも分類※2されています。

  • (※1)紅葉シーズンには大量の落ち葉が流れてくるため、取水口に設置されたスクリーン(網状の構造物)に落ち葉やゴミが蓄積します。これらが蓄積すると取水効率の低下を招くため、定期的に落ち葉の除去作業を行い、発電所の安定運転を維持しています。写真(右)は除去作業をしている様子です。

    (※2)堤高15m以上のものを法的に『ダム』と定義しています。

除塵機が動いているところを近くから見学させていただくだけでなく、水車に土砂を送り込まないように砂利などを沈殿させる沈砂池も見学させていただきました。沈砂池の中は洞窟のような雰囲気で、別世界に入ったような感覚になり非常に楽しかったです。山梨県企業局の職員さんにライトで水を照らしていただくと、不純物は全く見えず、非常に澄んだ水が流れていました。

⚡野呂川発電所

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 野呂川発電所は、昭和38年1963年)12月に運転を開始した県営4番目の水力発電所です。南アルプスの名峰・北岳周辺から早川流域の最奥部にかけて広がる豊かな水源を活用し、最大出力20,300kWを誇ります。この発電規模は県営発電所の中では奈良田第一発電所に続く第2位の規模を有しており、山梨県の安定した電力供給を支える重要な基幹施設として位置づけられています。

  • (※3)発電所内には「リレー」と呼ばれる保護装置が設置されており、発電所の安全を守る重要な役割を担っています。何らかの異常が発生した場合、この装置が即座に異常を感知し、大きな事故につながる前に発電機を自動的に停止させるとのことです。

    (※4)発電機の上部に見えている装置は「励磁装置(れいじそうち)」と呼ばれ、発電に必要な強力な電磁石を作る部分です。発電機本体は下にあり、外径の直径は4.2m で、中心で回っている回転子(ローター)が直径2.6m。これが1分間に428回転しています。メンテナンスは12年に1度で、耐用年数はおおよそ36年ほどとのことでした。


野呂川発電所 概要

所在地    : 南アルプス市芦安芦倉
最大使用水量 :  7.00 m3/s
有効落差   :  344.90m
最大出力   :  20,300kW
発電開始   :  昭和38年12月

🔋奈良田第一発電所

奈良田第一発電所は、山梨県南巨摩郡早川町・南アルプス山地の深い谷あいに位置する、県営水力発電所のひとつです。かつては、早川水系の6発電所を管理する早川水系発電管理事務所が併設されていましたが、2025年4月より山梨県甲斐市竜王新町にある発電総合制御所庁舎2階へ移転しました。
アニメ『ゆるキャン△』の聖地にもなっているようで、奈良田第一発電所近くにあるトンネルや周囲の風景などは作中に登場しているとのことでした。

⚡西山ダム(発電所)、取水口監視所見学

美しい山岳地にたたずむ、県営水力発電の要

山梨県南巨摩郡早川町の山あい、富士川水系・早川の上流に位置する「西山ダム」は、野呂川総合開発において最初に運用が開始された県営水力発電所・西山発電所の取水ダムとして建設されました。

加えて、令和2年(2020年)8月には、ダムの維持放流※5を活かした小水力発電所、「西山ダム発電所※6が再生可能エネルギー導入の一環である 「やまなし小水力ファスト10」※7の5地点目として運転を開始し、環境負荷の少ない発電を新たに実現しています。

  • (※5)ダムの下流にある河川環境や生態系を維持するため、ダムから一定量の水を常時放流すること。魚類の生息環境や水質の保全が目的です。

    (※6
    )西山ダムから放流される水は、これまで発電に活用されていませんでしたが、水資源の有効活用を目的として、この放流水を活用した小水力発電所「西山ダム発電所」が建設されました。

    (※7)
    山梨県では固定価格買取制度を活用し、「やまなし小水力発電推進マップ」に掲載されている地点を中心に、平成25年度から10か所程度の小水力発電所を、集中的に開発することを目指しています。なお、工夫しながら迅速に開発を進めていくことから、名称については「ファスト10」としました。

    【出典】山梨県「やまなし小水力ファスト10」
    https://www.pref.yamanashi.jp/kigyosom/kigyo_gaiyou_h21.html
    (2025年11月17日閲覧)

取水口監視所にはたくさんのモニターとボタンがありました。マウス操作でカメラを動かすことが可能で、各取水口を詳細に監視することができます。

≪西山ダム発電所 概要

所在地     : 南巨摩郡早川町奈良田
最大使用水量  :  0.54m3/s
有効落差    :  12.57m
最大出力    :  49kW
発電開始    :  令和2年8月
年間発生電力量 : 330,000kWh
CO2削減量   : 230t/年

おわりに

今回初めて早川水系の一連の発電所を上流から川の流れに沿って見学でき、非常に貴重な体験をさせていただきました。笛吹川水系の発電所とは異なり、山深い場所に発電所が位置していることから、通行規制のかかった山道を通ったり、洞窟のような沈砂池を進んだりとこれまでしたことがない体験ができ、終始探検しているかのようで非常に新鮮でした。また、野呂川発電所では発電方式について詳しくご説明いただき、流量や流速に合わせて発電設備が設計されているというお話から、その土地の環境に技術を適応させて発電所やダムを建設していることに感動しました。