きぼうのでんき2026年8月号

ソーラーシェアリングで
農地再生の可能性を探る!

果物つくって、電気もつくる? 山梨県南アルプス市 環境ネットワーク
環境ネットワーク全体の航空写真

全体写真

ブルーベリーがなっている様子

太陽光パネルの下で実るブルーベリー

細田さんに質問をするパルシステム生産者消費者協議会のメンバーたち

細田さんに質問をするパルシステム生産者消費者協議会のメンバーたち(写真右から2人目が中村さん)

産直産地「アップルファームさみず」代表の山下一樹さん

産直産地「アップルファームさみず」代表の山下一樹さん

ソーラーシェアリングは農家の危機を救うのか?

6月下旬、梅雨の合間となったこの日は晴天。太陽の日差しが肌にじりじりと照り付けるなか、山梨県南アルプス市にある発電産地「環境ネットワーク」を訪れたのは、パルシステム生産者消費者協議会(*1)のメンバーたちでした。

中村真紀さん(パルシステム千葉組合員)
「ソーラーシェアリングの可能性にずっと興味がありました。太陽光パネルの下で本当に作物は元気に育つものなのか? 今日はその実態をじっくり拝見しようと思って!」

ソーラーシェアリングとは「作物が使いきれない"余剰光"を太陽光発電に回すしくみ」。作物をつくるために必要な光は確保しつつ、光合成に使われない分の光を頭上の太陽光パネルで受けて発電もしよう、というわけです。

中村さん
「いま農家さんたちは、酷暑での農作業を強いられ大変な環境にいます。農作物をつくりながら、太陽の力で同時に電気もつくりだせるなら、農家さんの仕事の選択肢が広がるかもしれない。それが本当ならすごく希望のある話だな、と思って」
果樹によって「光飽和点」が違う?

そんな中村さんの熱い思いに突き動かされて参加した山下一樹さんは、パルシステムの産直産地「アップルファームさみず」の代表。長野県北部で、りんごをはじめ果樹栽培を父の代から受け継いで、一手に切り盛りする若きホープです。

山下一樹さん
「ソーラーシェアリングはずっと興味があったんですよ。ただ一口に果樹といっても、種類や品種で光飽和点が違うので、太陽光パネルが日よけになったときに、光合成に必要な太陽光の量をその果物に合わせるのは簡単じゃないな、と思って、詳しいことをずっと知りたかったんです」

植物は成長のために日光を必要としますが、「光が強ければ強いほど、無限に光合成の量が増える」わけではありません。光の強さをどんどん強くしていくと、ある一定の強さで光合成のスピードは頭打ちになる。光合成量がピークに達する光の強さ――つまりこの「光飽和点」が確保されるなら、ソーラーシェアリングは成立する、というわけです。

ブルーベリーの樹の下は白いシートで日光を反射させている

ブルーベリーの樹の下は白いシートで日光を反射させている

地域には遊休放棄地があちこちに

地域には遊休放棄地があちこちに

太陽光パネルの下でも果物はすくすくと育っていた

太陽光パネルの下でも果物はすくすくと育っていた

作物や気候に合わせてコントロール
細田俊二さん(環境ネットワーク)
「太陽光パネルの影に入った場所にも、空気中で反射した光(散乱光)が届きます。植物は直射日光だけでなく、この散乱光も効率よく利用して光合成を行うため、パネルを適切に配置すれば、影の下でも植物は十分育つんです」

もっとも、ソーラーシェアリングを成功させるためには、作物の種類や地域の気候に合わせたコントロールが必要、というのが農学分野では共通の認識。その点、環境ネットワークのソーラーは甲府盆地の南西のなだらかな斜面に立地し、富士山越しに照らす朝日も眩しく、遮るものがほとんどないことから恵まれた日照環境といえます。

細田さん
「そして私たちが栽培しているのは、ブルーベリーとシャインマスカット。山梨の名産ですよ」

よく整備されたブルーベリー畑の足元をみると、一面に白いマットが敷かれています。太陽光パネルから零れ落ちた光はブルーベリーを直接照らすだけでなく、地面・葉で反射した光や空気中で散乱した光が、パネルの影に入った場所にも届きます。

発電は農業のよきサポーター
細田さん
「ブルーベリーは比較的弱い光でも光合成を行うことができる果物。こちらの農園では、太陽光パネルによる適度な遮光の下でも、良好な生育と収穫実績が得られているんです」

一方、糖度ときれいな黄緑色の外観が命のシャインマスカットの栽培は、少々デリケートなようです。

細田さん
「光が不足すると、果皮の色づきや糖度に影響する可能性も。収益性の高いシャインマスカットへの転換では、出荷に見合う品質を収穫できるまで約5年かかるのですが、太陽光発電の収入があれば、その期間の収入の不足分を補うことができるんです」
シャインマスカットの果樹園

シャインマスカットの果樹園で「畑を管理する従業員は、そのほとんどが元農家。ソーラーシェアリングは技術と意欲を持つ農家の新たなステージも作るんです」と語る

屋根の下で地域の農業をよみがえらせる!

現在17カ所(そのうち6カ所がパルシステムでんきに供給)のソーラーシェアリングの太陽光発電所が立地する地元で生まれ育った細田さん。かつて、町全体に広がっていた実り豊かな果樹の畑たち。しかし、高齢化や後継者不足、酷暑、資材価格の高騰などを背景に、耕作が続けられなくなった元果樹園が地域に増えています。一度は故郷を離れていた細田さんでしたが、そんな故郷の光景を目の当たりにし、「何とか地元を元気にしたい」と一念発起してたどり着いたのが「遊休農地や耕作放棄地を再生し、太陽光パネルの下で農業を地域によみがえらせる」ことだったのです。

また、これら太陽光パネルでつくられた一部の発電所では、災害等による停電時に、地域の住民が携帯電話などの充電に利用できる非常用電源設備を設けているといいます。

災害等による停電時に、自治体と連携して地域の住民に開放される非常用電源設備

災害等による停電時に、自治体と連携して地域の住民に開放される非常用電源設備

収穫されたばかりのブルーベリーをパック詰めする工房では、「おいしそうでしょ? ほんと甘いんですよー」と地元の方々がいきいきと従事していました。そんな様を見て「地域を元気にするソーラーシェアリングはやはりもっと広げるべきですね!」と意欲満々な中村さんとともに、山下さんも細田さんとの語らいを通じて手応えを感じている様子。

山下さん
「まずは品種を特定して、ぶどう畑でチャレンジしてみてもいいかも、と思いました。すでにぶどうの樹を支える棚があるので、ソーラーをそのまま設置できれば一石二鳥かもしれません」

ソーラーシェアリングは地域農業活性の推進力となるか!?――組合員や生産者の注目を集める中、細田さんたちの挑戦はこれからも続きます。

おひさまフルーツやまなし株式会社の工房では地元の女性たちがブルーベリー詰めの真っ最中

おひさまフルーツやまなし株式会社の工房では地元の女性たちがブルーベリー詰めの真っ最中

🫐 農業と発電の両立で、地域に新たな希望を! 🫐
ソーラーシェアリングが切り拓く未来

*1 パルシステムの"生産者"と"消費者(組合員)"が対等な立場で協議し、産直をより良くするために活動する公式組織

*2 株式会社環境ネットワークが発電設備の整備・運営を担い、ソーラーシェアリングにおける営農は、おひさまフルーツやまなし株式会社が担っている。