♨️ 温泉は、地域を救う! ♨️
こけしは土湯温泉のトレードマーク
福島市内から車で30分ほど。吾妻連峰の中腹にあるひっそりと佇む温泉地、土湯温泉は開湯が1400年以上前と伝えられ、単純泉から硫黄泉、炭酸水素塩泉など様々な泉質を楽しめる湯治場として親しまれていました。
観光協会の会長職として、小さな温泉場を盛り上げようと奔走しています。かつて土湯温泉には、年間で40万人近い観光客が訪れていました。しかし2011年の東日本大震災と原発事故の影響もあり、一時は27万人にまで激減。
山間に佇む土湯温泉街
10種類以上の源泉が湧き出る
豊富な源泉を多く持つ土湯温泉。原発事故を契機に改めてエネルギーの在り方が見直されたとき、地元が持つ温泉資源を使って地熱発電による再生可能エネルギーを復興の事業として興せないか、と考えたのです。
しかし、ひとつ大きな懸念がありました。それは、一般的に地熱発電が普及しない理由に、地域住民から「発電に使った温泉をそのまま入浴に使うわけにはいかない」という反対意見があげられていたこと。
高温の温泉による蒸気の力でタービンを回し発電したあと、温泉の熱が奪われてぬるくなってしまったり、泉質や湯量が変わるリスクがあり「リスクを抱えたまま下流域の温泉街に流れると、温泉地としての本来の価値が下がってしまい困る」というわけです。
そこで加藤さんが見つけ出した答えが、地熱発電方法のひとつ「バイナリー発電」でした。「バイナリー」とは「2つの」という意味。こと発電においては「2つのサイクルを組み合わせて発電すること」とされています。
第1のサイクルとなる「温泉の熱源」を使いつつも、第2のサイクルとして「温泉の熱で温められたペンタンという液体によって発生した蒸気」によってタービンを回します。文字通り「バイナリー」な発電。直接、タービンと接触することなく、温泉は源泉のまま各旅館の浴場へ給湯されていきます。
それで考え出されたのが「発電時に使用した冷却水を生かしたエビ養殖」でした。
温泉街からさらに源泉を辿った山間、バイナリー発電機へ至る山道の途中にその"養殖場"はあります。発電機の冷却用に使用して温まった湧水を再利用し、熱帯に生息するオニテナガエビの養殖に成功します。光熱費をかけずに育てられたえびは、今や温泉街の人気の体験コンテンツになっています。
土湯温泉観光協会の加藤舞さん「バイナリー発電所にご案内したことがきっかけでリピーターになる方がたくさんいらっしゃるんです!」
発電事業そのものは、地元出資で立ち上げた町づくり会社「株式会社元気アップつちゆ」が運営を牽引し、観光協会は温泉地としての価値創造を次々展開していくパートナーに。年間約1億円規模に及ぶ売電収入の一部は、エビ以外にもどぶろくなどの名産品開発に活用され、コロナ禍では年間17万人まで観光客の数が減少するも、今(2026年現在)は30万人の観光客が訪れる温泉地になっています。
加藤さんたち土湯温泉が取り組む「再エネ×温泉復興」は、その先進地として行政や企業、教育機関からの視察や研修旅行も相次いでいるといいます。加藤さんは、そのキーワードを「若者、バカ者、よそ者」と言います。
源泉の熱を損なわない売電収入と新事業を生み出した土湯温泉。パルシステムでんきを利用しながら、これからも注目したい発電産地です。
温泉の熱を使って発酵させた納豆もお土産として大人気
空き家をリノベーションし、外部からの起業者も招き入れている
加藤貴之さん(写真左)と、2026年に観光協会に赴任したばかりの鈴木諒夢さん。「温泉と発電、そしてエビに発酵グルメ。なかなか他では見られない魅力がたくさんです。私自身、地元に眠る価値をもっと掘り起こしたいです!」(鈴木さん)