パルシステム電力通信NO.5 東北おひさま発電㈱

 

ながめやまバイオガス発電所を訪問しました。

農畜産物が豊富な山形県。西南部の飯豊町では、日本三大和牛と言われる「米沢牛」の4割を生産しています。今回は、東北おひさま発電株式会社の責任者である後藤さんにご協力いただき、ながめやまバイオガス発電所(2020年7月完成)を訪問しました。

東北おひさま発電株式会社では、「自立した地域と子どもの未来を創る、地域エネルギー発電所」を目指し、日々活動しています。決して尽きることの無い《自然から生まれる》をそのふるさとの恵みに感謝しながら《クリーンな電力》を生み出しています。


\ 日本初の肉牛のバイオガス発電所 💡  /

 

「米沢牛」のフンで発電する

東北おひさま発電株式会社は、肉牛(※1)乳牛(※2)の“フン尿”(年間約12,000トン)と、食品工場の廃棄物(年間4,800トン)を使用した日本初のバイオガス発電所を運営しています。
ここには1130頭の肉牛と300頭の乳牛がいます。(山形県産の牛は30か月程の育成期間を要して成長します。33か月以上の牛のみを米沢牛として扱います)

※1・・・食肉を生産するために飼育された牛
※2・・・生乳を生産するために飼育された牛

牛さんの消毒用の熱湯は、地下に埋められたパイプラインを通して運びます。冬には雪の降る東北ですが、パイプの通っている地面には雪が積もらないそうです!

 

自然と共存する

畜舎はアニマルウェルフェアに基づき、牛が動けるように作られました。牛を横1列でつなぎ飼いにし、通路にはフン尿排出機を設置。集められた牛フンは返送液で希釈された後、地下埋設パイプを通り原料槽に送られます。

以前の牛舎は仕切られた桝の中に数頭まとめられ、放し飼いをしていました。牛がフンを踏み固めてメタンが発酵すると、空気中にガスが発生して悪臭が出てしまいます。周辺民家に耐えられないにおいが発生してしまわないように、工夫を凝らして畜舎を改築し牛フンの収集を簡略化しました。

バイオ " ガス " 発電

牛フンなどの家畜フン尿や食品廃棄物を「発酵槽」で微生物の力を使用し40日間発酵させ、そのプロセスで生じた「メタンガス」を燃焼して発電しています。

このメタンガスは濃度が50~60%ほどのため、爆発の危険性はなく安全です!

水のタンクで有機物分解してガスを作り出す際にガスはタンクの上に上がります。敷料が有機物として残り上に浮くと、タンクの中でガスを吸い上げることができなくなり、発電量が下がってしまいます。

畜舎の敷料を工夫をすることでフンによる牛の転倒防止や発酵時に有機物として残らないように工夫をしています。

 

安全安心な有機肥料

ながめやまバイオガス発電所では酸素に触れない状態で活動する微生物の働きで有機物を分解する嫌気性発酵を活用しています。

発酵残渣は固液分離棟で固分と液分に分離し、再生敷料や良質なバイオマス堆肥・バイオマス液肥として利用します。適切な滞留時間を経て有機物が十分に分解されるため、化学肥料に代わる安全安心な有機肥料です。

日々、地域の農家と勉強しながら研究を進めています。

 

\ 地元の酒粕も電気に 🙂  /

東北最大級の酒造資料館「東光の酒蔵」に訪問

ながめやまバイオガス発電所では、牛フンを発酵させる過程で日本酒「東光」を醸造する小嶋総本店などの食品加工業者からでた産業廃棄物を年間約4,800トン混ぜ合わせて発電をしています。
加工残渣(※3)には、発酵を促進する役割があり、発電された電気は再び企業の元に還元することにより資源が循環しています。
※3・・・果物,リンゴの搾りかす、せんべいやケーキのくずなど
 

日本酒「東光」を醸造する小嶋総本店は、製造に用意る全ての電力を、自社の酒粕を使用する「ながめやまバイオガス発電所」の電力でまかなっています。酒造資料館の館内は、まるで昔の酒蔵のような空間が広がり、併設の酒販売処では東光の試飲とお買い物をお楽しむことができました。

 

発電所名 契約電力 所在地
ながめやまバイオガス発電所 500.0kW 山形県西置賜郡飯豊町

 

取材協力:ながめやまバイオガス発電所