バイオマス発電所(岩手県軽米町)
鶏糞で、電気をつくりたい!
岩手県北東部の山中に、十文字チキンカンパニーのバイオマス発電所はあります。毎日、周辺地域からトラックが多い日で数十台、発電所を訪れます。トラックに積まれているのは「鶏のフン」。砂のように乾燥したフンは、クレーンとコンベアを使って焼却用のボイラーまで次々に搬送されていきます。
2016年10月に開所した、鉄骨造4階建ての巨大な発電所。当時、約65億円で建設され、国内の鶏ふん発電所としては5番目、規模も国内最大級でした。年間稼働日数315日、契約当初の年間売送電量は約3630万kWh(約1万世帯分)にのぼりました。このすべてが「パルシステムでんき」となって、契約組合員の家庭を照らしています。
「ボイラーでフンを燃焼した熱を使って水から蒸気を発生させ、タービンと発電機を回して発電するバイオマス発電です。そういう私自身、まさか鶏のフンで電気ができるなんて思いもよりませんでした」と語るのは古舘さん。
私たちはずっとここ岩手県内で代々続く養鶏農家さんとともに、パルシステムの組合員のみなさんに『までっこ鶏』をお届けしてきました。なので、実は全員が発電については素人だったんです。じゃあなんで発電なんか始めたの?ってよく聞かれます。
ひとつは年間5,000万羽の鶏を飼育しながら、毎日400トンも発生する鶏糞を有効活用できないか ―これまでは堆肥に還元してきましたが― という長年の課題を解決したい、という目的がありました。
安全で安心できる電気を〝までっこ〟につくろう!
毎週、パルシステムを通じてお届けしている『までっこ鶏』の“までっこ”とは岩手県北部の方言で“丁寧に”という意味。“手間をかけ丁寧に鶏を育て、安全で安心できる商品を届けよう”という思いが込められています。こうしていま、鶏のフンを活用して電気をつくるのも、思いは実は同じなんです。
そもそも同社では長年、地域資源循環型の「耕畜連携(田畑と畜産の農家が連携すること)」にこだわっていました。地元を中心に300戸以上の農家が育てる飼料米は、鶏の飼料に使われ、それは、休耕田(耕作放棄地)を活用することにもつながっていました。そしていま、それまで肥料・堆肥となり、畑や水田、草地などに使われていた鶏フンは、新たに電気をつくるエネルギー源にもなっています。
「安全で安心できる電気を丁寧につくり届けよう!その思いはどこにも負けませんよ」(古舘さん)。
「鶏糞が減ると、電気も減る!?」
夏場は鶏肉の需要が減るんです。暑いですから。そのため鶏肉の生産自体が減るので、その結果鶏糞も減るんです。毎日出る鶏糞は、これまで畑の堆肥に活用していましたが、それでも近隣の住民のみなさんから臭いの苦情はあったんです。
夏場に鶏糞の量が減ると、近隣からの苦情も減る――それが「良いこと」の理由でした。
バイオマス発電に鶏糞が活用されるようになって、臭い問題は解決しました。でも今度は、鶏糞が減ると電気も減ることに。パルシステムでんきの多くを担っている私たちとしては心苦しい限りです。
自然は気まぐれ。曇りの日が続けば太陽光発電が減るのと同じように、鶏の糞が減ればバイオマス発電が減るのも、自然の摂理です。毎日私たち“元気に糞を出してくれよー!”って思いながら仕事してますよ。